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1学年で震災校外学習へ

「救えた命だったー。」
 石巻市震災遺構大川小学校で伝承活動をしている佐藤敏郎さんが生徒に向けて伝えてくれました。

 10月31日(木)に1学年全員を対象に、校外における震災学習を実施しました。訪問場所は
 ①高田松原津波復興祈念公園、気仙中学校(旧気仙中学校校舎)
 ②南三陸町震災復興祈念公園(旧防災対策庁舎、南三陸さんさん商店街)
 ③石巻市震災遺構大川小学校
の3か所でした。
この校外学習に向けて、様々な活動を事前に行いました。
 (ⅰ)当時の新聞記事や震災に関する資料などをまとめた冊子を用いて知見を深める
 (ⅱ)大川小学校に関する調べ学習&プレゼン発表
 (ⅲ)釜石の出来事(釜石の奇跡)を経験された方の講話
 (ⅳ)震災当時教員として勤務していた現大槌高校副校長の講話
 (ⅴ)震災で父親を亡くした現大槌高校教諭の講話
この他にも定点観測やSIM大槌の活動を通して、震災について何度も考える機会を設け、学年での震災学習のまとめのような位置づけで今回の校外学習を実施しました。

 高田松原、南三陸については生徒が自由に行動していたので、私が撮影した写真をご覧ください。

高田松原津波復興祈念公園(奇跡の一本松)
旧気仙中学校
南三陸町震災復興祈念公園(左中央に旧防災対策庁舎、奥にさんさん商店街)

 移動のバス車内では、社会科の教員から訪問先と大槌町の地形図を見比べながら、震災の地理的な要因についての説明を受けました。
 旧気仙中学校の見学は、建物の中に入ることはできませんでしたが、海の近くに校舎があり、すぐに全員が避難して無事であったことを学びました。
 高田松原津波復興祈念公園では、お菓子やお土産を買っている生徒もいましたし、南三陸町震災復興祈念公園では、昼食をとったりしていましたが、生徒たちはそれぞれ犠牲になられた方の気持ちや当時の様子を想像している姿が伺えました。

 午後に石巻市震災遺構大川小学校(旧大川小学校)に向かう道中、北上川の川口付近を通りかかりましたが、どこまでが海でどこからが川なのかはっきりとはわかりませんでした。海から大川小学校までの距離は3.7kmですが、海抜がほぼ変わず、平坦な地形が続いており、津波の被害があったことを想像できないほど穏やかな景色が広がっていました。
 現地に到着すると、佐藤さんが迎えてくださいました。ここには町があったこと、生活があったこと、日常があったことを伝え、あの日何が起きたのか、どうするべきだったのかを実際に校舎を巡りながら語っていただきました。私が印象に残った言葉が冒頭の「救えた命だったー。」でした。校舎の裏山に実際に登り感じたこと、お話を聞き想像した気持ちや想い、生徒それぞれが様々なことを感じ・考えながら過ごした貴重な時間だったと思います。

校舎の裏山から撮影した大川小学校

 お話を聞いた後、大川コミュニティセンターに移動し、グループワークを行いました。ここでは、いまどのような気持ちなのかをカードを用いてグループ毎に共有した後、今日1日の活動を通して何を感じたか、何を学んだか、そして震災伝承とどのように向き合っていくかをグループで共有⇒全体共有(5名程度)の流れで進みました。生徒一人ひとりが真剣に震災と向き合い、
「いのちを守るための行動をしたい。それが犠牲者の方たちに寄り添うことにつながると思う。」
「避難訓練や危機感を持つことの大切さがよく分かった。」
「震災伝承の意義をよく考えていきたい。」
など自分の考えや想いを伝えあっていました。

共有の様子@大川コミュニティセンター

 震災当時の記憶がほとんどない生徒たちにとって、震災を自分ごととして捉え、想像し、考えや感情を共有することで得られた学びは、これからの人生に少なからず影響を与えるでしょう。生徒の口からそれぞれの想いが語られている様子を見て、震災学習を実施してよかったと心から思いました。

今日の学びを、震災学習を通しての学びを忘れずに。
過去に何があったのか、未来に何があるのか想像しよう。
どのように過去を生かしていくのか、いまをどう生きるのか、命を真ん中にして考えよう。

 彼らの中に芽生えた小さな意識が、やがて大きく成長し、町や人を動かし、次の世代へと紡がれていくー。そんな日を夢見て。