探究のすゝめ
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」と云えり。
このフレーズって聞いたことはありますか?
これはきっと誰もがよく知る福沢諭吉(旧1万円札の人だよ)の『学問のすゝめ』の一節ですね。ただ、このフレーズの続きがあることまで知っていますか?続きをざっくり要約すると、「人間がみな平等ならば、能力とか財産とか身分とかに差がないはずなのに現実には差があるじゃん!この差ってなんなの?!」って感じです。そして福沢が見つけたこの問いに対する答えは「学問を学んだかどうか」です。
『学問のすゝめ』が著された時代は、江戸幕府が倒れ、激動の変化を迎えた明治時代です。そんな先行きが不透明な時代の中で、人々には何が求められるのか?福沢の答えは「学問」というわけです。
要するに「『学問のすゝめ』が書かれた時代って、現代と共通点多くない?」って感じてほしいわけです。明治時代は先ほど述べたとおり。一方で現代社会はというと、Society5.0が提唱され、予測困難な時代になっていくと言われています。これまでと違う新たな変化が訪れる時代、そしてその時代を人々は生きなくてはいけないという点で、明治時代と現代には共通点があると思います。
では、明治時代に生きるために必要なことが「学問」であったならば、この現代に生きる我々に必要なものはなんなのか?・・・それがきっと「探究」なんだろうと私は思います。先行きが不透明な時代を進むために、自分で考え・自分で学び・自分で実践する力を身につけなくてはいけない。そしてこうした力を身につけるために、「ジブンゴト」である問いを通して主体的に探究活動に挑む高校生達の姿を見ながら、私の感じたことを少しでも伝えることが出来ればと思います。
①MY PROJECT AWARD 2024 岩手県Summit参加に向けた準備
今回大槌高校からは、MY PROJECT AWARD 2024 岩手県Summitに3年生 1名、2年生14名、1年生10名が参加しました。(当日の参加が叶わなかった生徒もいましたが…残念…)ただ、1年生はもちろんですが、2年生もほとんどの生徒が今回初参加ということで、連日の準備に追われていました。
生徒たちは昼間は授業、放課後は部活動かマイプロの準備、部活終わりの生徒は終わってからマイプロの準備へ…スーパーハードスケジュールです。けどそこで簡単に挫けないのがパワフル高校生。自分のことだけでなく、同じくマイプロジェクトに取り組む級友達にも目を向けてアドバイスをどんどんしながら、全員で互いのマイプロジェクトを良いものにしていこう!とチームワークを発揮していました。
何度も何度も自分のスライドとにらめっこ、何度も何度も友人と発表練習…マイプロアワードで少しでもいい発表をしたい、他の高校生の探究活動からヒントを得たい、そんな想いで日々生徒が励む様子を間近で見続け、当日は生徒たちにとって良い学びの1日になりますようにと願うばかりでした。
②いざ、MY PROJECT AWARD 2024 岩手県Summitへ!
到着した岩手県立大学で私たちを待っていたのは…雪!雪!!雪!!!
雪が滅多に降らない大槌で暮らす生徒たちのテンションも爆上げです(多分)。 その後、無事に受付を済ませると、会場にはたっくさんの高校生達が!
そんなお祭りのような雰囲気で始まった開会行事では、「化けろ」というテーマが発表され、今日の目標を生徒達が自分で考えていました。また、昨年度全国Summitに出場した本校のK.Kさんは、参加者の高校生達へ熱い応援メッセージを送ってくれました!
そして開会行事が終わると、いよいよ各教室に分かれてマイプロジェクト発表会が始まりました。1番目に発表の生徒もいれば、教室内で最後の発表になる生徒も。緊張しながらも、これまで頑張って取り組んできたマイプロジェクトを全員が自信を持って堂々と語る姿は、とても立派でした。
ここに取り上げられなかった生徒達も、自分のマイプロジェクトを高校生達の前で発表し、そこからサポーターの大人や同じ教室の高校生との意見交換や質疑応答を通して、新たな気づきや学びを得ることが出来ました。非常に実りある時間を過ごしたんだなということが、閉会行事で見かけた生徒達の顔からは感じられました。そして、閉会行事終了後には、交流会にも参加してきました。
とても濃密な時間を過ごした参加生徒達。大槌高校に戻り、会場で得た学びや気づきを胸に、またそれぞれのマイプロジェクトへと取り組んでいくことでしょう。そんな中、2年生のマイプロジェクトアワード参加者にはちょっとした「ミッション」が…
③大槌高校に戻ってきて…
その「ミッション」の様子がこちら!
探究の時間に、MY PROJECT AWARD 参加の生徒には、「同級生のマイプロジェクトの伴走者としてアドバイスをすること」というミッションです!同級生の中には、なかなかマイプロに取り組めない生徒や、問いの解決のために悩みを抱える生徒もしばしば…。そんな同級生の伴走者となった生徒達は、「それってどういうことなの?」「こんなアクションしてみたらいいんじゃない?」「なるほど、それがいいと思うよ!」などと様々な声がけをしていて、同級生達も普段よりも表情豊かにマイプロに取り組んでいました!
教員じゃなくて、同級生だからこそ出来るアドバイス。そして、マイプロアワードに参加したからこそ気づいた学びを、自分の言葉に置き換えて熱心に伝えている様子はとても頼もしい伴走者でした。
④「探究のすゝめ」
ここまで長文にご付き合いいただきありがとうございます。もう少しだけ続きます。
私が今回、このマイプロアワードを観覧して1番に感じたことは、探究活動って人生に必要だ!ということです。自分なりの問いを見つけて、今日まで主体的に取り組んできた高校生。そうした問いを見つける力は、社会でも武器になる力でしょう。また、そんな高校生の活動を支えながら伴走してきた各校の先生や高校生の活動に積極的に協力してくれる地域の方々が欠けてしまえば、実りある探究活動には繋がらないでしょう。そうした多くの人が支える環境の中で、自分が気になること、やりたいことを伸び伸びと実践する高校生の姿をたくさん感じることが出来て非常に充実した1日を過ごせました。
そして、もう1つ思ったことが、「自分も」探究活動してみたいということです。私が高校生の時にこんな取り組みはなかったのですが、じゃあ私が探究活動をするなら何を探究してたのだろう…?と思う場面が今年になって増えました。一人ひとりの多様な問いから、「そんな視点があるんだ」とか、「そんなことを気にかけているんだ」といった、新鮮な気づきを伴走することで常に得ています。
高校生は探究活動を通して、それに伴奏する私たち教員(大人)はそんな高校生の姿を通して、これからも学び続けることができる。そして、こうした学びの姿勢はいつになっても忘れてはいけないものです。これからも学び続ける大人でありたい。高校生のみんなの学びを間近で見て、支えていきたいと切に願う機会になりました。