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「高校生と語る これからの大槌高校を考える会」を終えて

私は今年の4月から大槌町より大槌高校コーディネーターを拝命し、大槌高校の職員室で勤務しています。いまは高校で勤務していますが、私は3月までは中学校の教員として勤務していました。大槌とはまた違う、いわゆる都会の学校で勤務していました。

「なぜ学校と地域の協働は必要なのか」

地域との協働はなぜ必要なのでしょうか。国や教育委員会が大事だと言っていても、ずっと、私には答えが見つかりませんでした。
私自身が高校生だったときには「地域に育ててもらった」自覚なんてなかったからです。私は、毎日カラオケ、映画、マックにいって暇な時間をとにかく何も考えず遊びまわっていました。それで不自由をした思いもなく、周りにいる大人は、「親と先生」だけでした。

中学校教員になってからもピンとくるものではありませんでした。言葉では大事だとは分かっているけれど・・・。

そんな私が大槌に来て大槌高校で働きながら、もちろん毎日地域の重要性を感じる機会はあるのですが、今回ある場を企画したことでその思いが確信に変わるような出来事・・・それを紹介したいと思います。

町民120人があつまった魅力化構想会議

11月22日、大槌文化交流センターおしゃっちで「大槌高校魅力化構想会議”高校生と語る これからの大槌高校を考える会”」が開催されました。私は中学校時代の経験から、こんな高校生が発表するという機会なんてあまり来てくれないんじゃ・・・と思っていましたが、大槌高校生、教員、そして大槌に住む地域の方々総勢120名が集まってくれました。

実は、私が地域をまわってちらしを配っているところから大槌町は”何か違う”ということを感じはじめていました。ちらしを渡していても「楽しみだね!」「何人か誘っていくから!」なんて声をかけてくれる方がなんと多いことか。高校生に対する地域の愛を感じ、なぜこんなにも高校生に関心を持ってくれるのだろうという疑問がふつふつと湧いてきました。

そして迎えた当日。最初のプレゼンテーション発表。
高校生代表2名と教員が本音で「地域と高校生で何ができるのか」というテーマで話をしました。

1. 左上:大槌高校2年生兼澤さん「町は誰がつくるのか」 2.    右上:大槌高校生徒会長菊池さん「地域との協働に関する高校生の本音​~未来に向けた生徒会案の提案~」3. 右下:大槌高校教員菊池先生「大槌高校に赴任して​実感した地域の力」4. 左下:プレゼンテーションを聞く参加者

ひとつ、兼澤さんの発表を紹介したいと思います。彼女は「町は誰がつくるのか」というテーマでこんなことを話してくれました。
「小、中での地域に関わる授業(ふるさと科)で、大槌町の自然の豊かさを知った。私はこの授業が大好きだった。そこで地域へ出る土台ができ、高校に入ってからも地域に関わりたいと思い大槌高校に入学をした。最初は地域に飛び込むことに不安があったが、飛び込んだ先には大槌の人のあたたかさがあった。
私はそこで気づいた。ただ地域の方がやってくれたイベントに観光客のように参加するのではなく、一緒につくるという気持ちがあるともっと深く地域の方と関わることができるようになるのだと。

兼澤さんの発表スライド


大槌はよく『何もない』といわれるけれど、自然の豊かさや人の温かさなどの『あるもの』に価値を見出して、町づくりをしていきたい。町は誰かがつくってくれるのではない、町は人がつくるのだ。だから私は一緒に町をつくっていきたい」

と緊張しながらも兼澤さんが語り終えました。その後、一瞬の静寂があるも、万雷の拍手が会場を包みました。中には涙している方もいました。
この生徒の学びも、地域の感動も私がこれまで見たことのないものでした。これこそが地域と学校が連携してつくった学びであると教わった気がします。

”地域協働・地域連携” 最近よく聞く言葉です。 
学生時代もそうですが、教員になってからも、教育は「学校」で行われるものであるとずっと思いこんできました。
正直に言うと、『何かあったら叩かれる』この時代、”生徒”、”保護者””地域”と対立や問題が起きないようにとにかく、学校内でなんとか解決しなければならないと勝手に抱えてこんでいました。
地域や保護者からご指導される電話を何度か受けるうちに、教員側が『生徒を地域に出して、失礼な態度をとったら教員が責任を負わなければならない』と思い込み、働き方改革という言葉を良いように使って、地域に出さないようにしていた自分に気付かされました。

子ども一人ひとりの成長を誰が担うのか

私は、これを学校もっと言えば先生が担うものだと思いこんでいました。ですが兼澤さんにとっては、”挑戦したい自分自身”と”一緒に挑戦する地域”が彼女の成長を支えていたのです。成長は自分と支えてくれる人でつくっていくものなのだと、至極当たり前のことに今更ながら気付かされました。

私自身は、生徒と向き合うことにワクワクして始まった教員生活でしたが、次第に、なんというか「余計なことを言わない」「余計なことをしない」と「決められたことだけをこなす」気持ちに変化していっていることに気付きました。私は、子どもたちは本当に好きだったけれど、この自分自身や学校教育のままでよいのだろうかと一度立ち止まりたくなったのです。それが、教員をやめた一つのきっかけでした。

4月初めに大槌に住み始めて今まで、できる限り外に出て、地域の方や地域にでている生徒に会いに行きました。今まで私が教員時代に地域に生徒を出していなかったこともあり、「地域連携を知りたい」気持ちが強かったからだと思います。

実際に地域に行ってみると、
地域行事、各地区自治会活動、郷土芸能などの地域の活動では、「元気にしてる?」「学校の勉強ちゃんとやってる?」「いつでも声かけて」という声が親でもない、先生でもない大人と生徒の間で自然に交わされている。それは、普段の生活でもそう。
「藻場に生息する海洋生物の生態が知りたい!」「すっぷぐ(郷土料理)を広めたい、だからキッチンカーをだしたいけどどうしたらいいかわからない」そんな生徒の挑戦したいという声に真剣に向き合ってくれる地域の方々。生徒は学校だけでは学べないことを、地域に出てどんどん学んでいました。

そして、11月22日のこの熟議の光景。いつも学校内で見ていたあの子もあの子も、いつもとは違う顔をして地域の方と話し合っていました。

普段とは全く違う顔を見せる生徒たち
司会をする生徒も

時間がもっとあれば…!と思うほど、世代を超えて誰もが真剣な眼差しで、でもあたたかい時間を120人で共有していました。

会が終わった後に聞けた
「こんなに自分たちのことを考えてくれるひとがいるんだということに気づけた。」
という高校生の言葉。

「この場所で生まれて育ってよかったと思ってほしい。そう思いながら無我夢中で保育をしてきました。今日、大槌が好きだと聞けてほんとに嬉しかった。」
震災時2,3歳だった彼ら彼女らを支え続け、見守ってきた方からの言葉。

たくさんの言葉を聞いた後、地域協働は「自分はみんなに見守られていると子どもたちが感じ取ること」、「成長を分かち合う」こと、そして「子どもと大人が一緒に成長し、成長幅がこれまで自分が思っていたよりも広がること」にあるのかも…そんなことを感じました。

そして一人の参加者の方から「70代になってからも、こんなワクワクすることあるんだな。これからの大槌が楽しみだ。」と声を掛けられました。
大槌高校が自分の母校であるわけでもなく、自分の子どもと関係があるわけでもない方まで、足を運び、こんなに一生懸命これからの大槌高校を考えてくれている。

『みんなで見守る。みんなで成長する。』

そんな大槌の教育にワクワクしています。これは大槌に来なかったら、経験できなかったこと。
これからも、大槌に存在している、地域×学校のチーム教育をたくさん学んでいきたいです。

最後に、、、
お忙しい中足を運んでいただいた皆さま、本当にありがとうございました。
皆さまからたくさんの学びをいただけたこと、感謝申し上げます。